1 目 的
児童家庭支援センターは、地域の児童の福祉に関する各般の問題につき、児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものに応じ、必要な助言を行うとともに、市町村の求めに応じ、技術的助言その他必要な援助を行うほか、保護を要する児童又はその保護者に対する指導を行い、あわせて児童相談所、児童福祉施設等との連絡調整等を総合的に行い、地域の児童、家庭の福祉の向上を図ることを目的とする。
2 設置及び運営の主体
設置及び運営の主体は、地方公共団体及び社会福祉法人等であって、都道府県知事(指定都市にあっては、市長とし、児童相談所設置市にあっては、児童相談所設置市の市長とする。以下同じ。)が児童福祉法第27条第1項第2号による指導委託先としても適切な水準の専門性を有する機関であると認めた者とする。
3 支援体制の確保
児童家庭支援センターは、要保護児童及び要支援児童の相談指導に関する知見や経験を有し、夜間・緊急時の対応や一時保護等を迅速かつ適切に行うことができるよう、児童相談所、市町村、里親、児童福祉施設、自立援助ホーム、ファミリーホーム、警察その他の関係機関との連携その他の支援体制を確保しなければならない。
4 事業内容等
児童家庭支援センターは、以下に定める事業を実施する。
(1)地域・家庭からの相談に応ずる事業
地域の児童の福祉に関する各般の問題につき、児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものに応じ、必要な助言を行う。
(2)市町村の求めに応ずる事業
市町村の求めに応じ、技術的助言その他必要な援助を行う。
(3)都道府県又は児童相談所からの受託による指導
児童相談所において、施設入所までは要しないが要保護性がある児童、施設を退所後間もない児童など、継続的な指導措置が必要であるとされた児童及びその家庭について、指導措置を受託して指導を行う。
(4)里親等への支援
里親及びファミリーホームからの相談に応じる等、必要な支援を行う。
(5)関係機関等との連携・連絡調整
児童や家庭に対する支援を迅速かつ的確に行うため、児童相談所、市町村、福祉事務所、里親、児童福祉施設、自立援助ホーム、ファミリーホーム、要保護児童対策地域協議会、民生委員、児童委員、母子自立支援員、母子福祉団体、公共職業安定所、婦人相談員、保健所、市町村保健センター、精神保健福祉センター、教育委員会、学校等との連絡調整を行う。
5 事業の実施
事業の実施に当たっては、次の点に留意するものとする。
(1)住民の利用度の高い時間に対応できる体制を採るよう配慮するものとする。
(2)支援に当たっては、児童、保護者その他の意向の把握に努めるとともに、懇切を旨としなければならない。
(3)児童に関する家庭その他からの専門的な知識及び技術を必要とする相談に応じる場合には、訪問等の方法により積極的に児童及び家庭に係る状況把握をし、問題点の明確化を図る。なお、専門的な知識を特に必要としない軽微な相談については、市町村と連携して適切な対応を図る。
(4)当該児童及び家庭に係る援助計画を作成し、これに基づく援助を行うなど、計画的な援助の実施を図る。
(5)処遇の適正な実施を図るため、相談者に係る基礎的事項、援助計画の内容及び実施状況等を記録に止める。
なお、個人の身上に関する秘密が守られるよう、記録は適切に管理するものとする。
(6)援助計画の作成に当たっては、問題点の把握、援助目標・援助方法を明確にし、これに基づく計画的な処遇を行うとともに、随時計画の再評価を行うものとする。また、必要に応じて関係機関との連絡・調整を図り、それぞれの役割分担についても計画に盛り込むこと。
児童相談所からの指導委託を受託する場合には、児童相談所の指導の下援助計画を作成する等、児童相談所の処遇指針との整合性を図る。
また、市町村の求めに応じ、技術的助言その他必要な援助を行う場合には、市町村や市町村が設置する要保護児童対策地域協議会と共同して援助計画を作成し、役割分担を明確にする。
(7)児童相談所から指導委託を受けた時又は市町村の求めに応ずる時は、正当な理由がないかぎり、これを拒んではならない。
(8)児童相談所から指導委託を受けた事例について、訪問等の方法による指導を行い、定期的にその状況を児童相談所に報告するとともに、必要に応じて児童相談所の指示及び助言を求めるなど、児童相談所と密接な連絡をとるものとする。
(9)夜間等の緊急の相談等に迅速に対応できるよう、あらかじめ、必要な関係機関等との連絡方法等の対応手順について児童相談所等の関係機関等と協議の上、定めるものとする。
(10)児童相談所と常に密接な連携を図り、児童相談所による技術的支援及び他の関係機関との連携に係わる仲介、調整等の協力を受けるものとする。
児童相談所と児童家庭支援センターとの連携については、「児童相談所運営指針」(平成2年3月5日雇児発第通知133号)による。
(11)相談を受けた場合等は、訪問や通所等の方法による援助をはじめ、必要に応じ関係機関との調整を図る等、柔軟かつ速やかに必要な援助活動を展開するものとする。
なお、複雑・困難及び法的対応を必要とするような事例については、児童相談所等の関係機関に通告またはあっせんを行う。
(12)相談の実施に当たっては、母子自立支援員、婦人相談員、家庭相談員、児童委員等との連携を図り、例えばこれらの相談員等が同一日に相談に応ずる「総合相談日」等を設ける等の配慮を行うものとする。
(13)児童相談所、児童福祉施設等との連絡調整を行うに当たっては、支援を迅速かつ的確に行うことができるよう円滑にこれを行わなければならない。
6 職員の配置等
(1)児童家庭支援センターの運営管理責任者を定めるとともに、次の職種の職員を配置するものとする。
ア 相談・支援を担当する職員(2名)
児童福祉法第13条第2項各号のいずれかに該当する者。児童福祉事業の実務経験を十分有し各種福祉施策に熟知していることが望ましい。
なお、児童福祉施設等に附置している場合は、入所者等の直接処遇の業務は行わないものであること。
イ 心理療法等を担当する職員(1名)
児童及び保護者に対し、心理学的側面からの援助を行う。
(2)職員の責務
ア 職員はその職務を遂行するに当たっては、個人の身上に関する秘密を守らなければならない。(児童福祉法第44条の2第2項)
イ 職員は、児童家庭支援センターの果たすべき役割の重要性に鑑み、各種研修会及び異種職との交流等あらゆる機会をとらえ、相談・支援等の技術等に関し自己研鑽に努めるものとする。
7 児童家庭支援センターの設備
次の設備を設けるものとする。
ただし、児童福祉施設等に附置している場合は、入所者等の処遇及び当該施設の運営 上支障が生じない場合には、附置される施設と設備の一部を共有することは差し障えない。
なお、設備については利用者の個人の身上に関する秘密が守られるよう十分配慮するものとする。
(1)相談室・プレイルーム
(2)事務室
(3)その他必要な設備
8 広報等について
児童家庭支援センターの利用促進を図るため、その目的や利用方法等について、地域住民が理解しやすいように工夫された広報活動を積極的に行うものとする。
また、児童家庭支援センターの所在が利用者に明確に把握されるように、その所在を掲示版等により表示すること。
9 経費の補助
国は、都道府県(指定都市及び児童相談所設置市を含む。)が児童家庭支援センターの運営のために支出した費用について、別に定めるところにより補助するものであること。
(参考) 援助計画の作成及び再評価の流れについて
(援助計画の内容)
・ 個々の児童、保護者等に対する援助の選択(児童、保護者等の意向及び具体的援助を行う者の条件を考慮し、その児童に最も適合する援助を選択する。)
・ 具体的援助の指針(援助の目標、児童の持つそれぞれの問題に対する指導方法、児童の持つ良い面の伸ばし方、児童の周辺にある保護者等に対する指導方法、その他必要な留意点等具体的かつ広範にわたり行う。)
(援助計画の作成及び再評価の流れ)
1.相談による問題点の把握(主訴から隠れた問題を探る)
2.援助目標の設定
3.援助方法の明確化(留意点及び関係機関との役割分担を含む)
4.援助計画の再評価(援助の実施に伴う新たな問題点の発見及び援助方法等)。
(具体的事例)
1.相談による問題点の把握
子ども(乳児)の夜泣きが止まらず困っている。(母親からの電話による主訴)
母親は育児方法が分からず子どもを虐待している疑いがある。(面接を重ねた結果隠れた問題が判明)
現在のところ、在宅での援助により経過を見ることとする。(援助の選択)
2.援助目標の設定
母親が育児に自信を持ち、安定した母子関係が形成されることを援助目標とする。
3.援助方法の明確化
向こう3か月は、児童家庭支援センターに週一回来所させ、育児上の具体的な助言を行う。
さらに、二週間に一度家庭訪問を行って、より具体的な助言を行う。
なお、場合により、母の育児力回復のため、1週間程度のショートステイの活用を検討する。
3か月後、経過良好であれば、2週間に1回の来所、1か月に一度の家庭訪問とする。
(留意点)
この母親の場合、高圧的な態度だと助言を受入れない。助言に当たっては受容的態度に留意する。
4.援助計画の再評価
家庭訪問により、子ども及び母親の偏食が見られ、また家庭が不衛生な状態であることが判明したため、当分の間、保健師が訪問指導を行うこととし、双方が情報交換を行いながら援助していくこととする。